ダブルチェック・トリプルチェックでも「ミス」がなくならない理由と「仕組み」の見直しとは
多くの会社で、「ミス」をなくすために、その仕事に関わる複数人で作業を確認をする
”ダブルチェック・トリプルチェック”という手法がとられています。
私が会社員時代にも、「ミス」が頻発した仕事の改善策として、
「チェック体制をより厳しくし、
という回答が出されたことがありました。
でも、作業人数が増えるほど、1人が発揮する力は
無意識のうちに低下してしまうという研究結果が出ています。
つまり、チェック体制の人数を増やしたところで、
何の改善にもならないうえに、
限りある人員と時間を無駄に使うことになってしまうというわけです。
そこで今回は、”ダブルチェック・トリプルチェック”でも「ミス」がなくならない理由と、
「ミス」をなくすために仕組を見直す視点についてご紹介します。
「ミス」を発見できないのは「社会的手抜き」
フランスの農学者であるマクシミリアン・リンゲルマンは、
”共同作業で作業人数が増えるほど、1人が発揮する力が低下する”
ということを発見し、これを「リンゲルマン効果」と名付けました。
リンゲルマンは実験を通して、共同作業では1人が発揮する力の低下が無意識のうちに行われ、
結果的に「社会的手抜き」が発生するという結果を導き出しています。
「社会的手抜き」が発生する原因
「社会的手抜き」は、共同作業をする際に無意識に発生します。
その主な原因として以下の3つがあげられます。
複数人で作業する当事者意識の低下
「ミス」をしないというチームの目標があっても、
共同作業の場合、一人当たりの責任が薄くなり当事者意識が低下します。
当事者意識が低下すると、
「自分でなくても誰かがやってくれるだろう」
という考えが無意識のうちに発生します。
このため、モチベーションが低下し、
一人ひとりが発揮する力が低下します。
周囲へ同調や自分の存在が浮くことへの恐れ
既に何人かのチェックを通過している資料が回ってきた時に、
「みんながOKと言っているのだからOK」
という同調心理が作用します。
また、今更「ミス」を発見して、
集団から自分の存在が浮くことを恐れます。
このため、挑戦する気持ちが低下し、
一人ひとりが発揮する力が低下します。
貢献度に対する評価が不透明
共同作業のなかで貢献しても、個人としての評価にはつながりにくいものです。
貢献度に対する評価が不透明であれば、
「自分ひとりが頑張っても仕方がない」
という考えが無意識のうちに発生します。
この考えが集団に作用するので、
意欲が低下し、一人ひとりが発揮する力が低下します。
ダブルチェック・トリプルチェックがうまくいく方法
「リンゲルマン効果」の発生を防ぎ、ダブルチェック・トリプルチェックを
有効に作用させるための方法を「検品作業の場合」と「文章校正の場合」でご紹介します。
検品作業の場合
検品作業のように、書類と実物の照合作業の場合は、
1人目の作業者と2人目の作業者のチェックする方法を変えます。
例えば
●1人目の作業者は、JANコードの番号を照合する
●2人目の作業者は商品名を照合する
というように、照合する項目を変えたダブルチェックを行うのです。
この検品作業では、JANコードや商品名などが
似ている商品の取り違いという「ミス」が起こっていないかを照合しています。
起こり得る「ミス」を想定し、チェックの方法を工夫することで、
”ダブルチェック・トリプルチェック”が有効に機能します。
また、どちらの作業者の確認が漏れていたかがわかるようにすれば、
当事者意識が高まり、「リンゲルマン効果」が発生しにくくなります。
文書校正の場合
文章校正は、それだけでビジネスが成立するかなり高度な専門技術です。
でも多くの会社で専門職は置かずに、
”ダブルチェック・トリプルチェック”で文章校正行っています。
文章校正の目的は、誤字脱字と日本語としておかしな表現を見つけることです。
複数の人で文章校正をする際のポイントは、
●後ろから読む(段落または1文ごとに末尾から読んでいく)
●音読する
ということ。
誤字脱字を見過ごすのは、「読んだつもり」になってしまうから。
文頭から読むと内容が分かってしまうため、
無意識に途中の文章をスキップしてしまいがちなのです。
文章を後ろから読むと、文の前後の関係が崩れるため、
文章中の誤字脱字の発見に集中できるます。
音読は、違和感を感じやすくするための方法です。
流れるように読めればOKですが、
読みにくい部分は、文法がおかしかったり、
言い回しが複雑になっている場合があります。
複数の人が音読をすることで、
「読み手の立場として読みやすい文章か」
ということが確認できます。
「ミス」をなくすためには仕組を見直す
共同作業をするなかでの「社会的手抜き」は無意識で起こります。
このことを理解したうえで、「ミス」をなくすための対策をするには、
仕組を見直すことが重要です。
正当な評価と安心安全な環境作り
「リンゲルマン効果」は集団のなかで、個人の責任が曖昧になることと、
貢献度に対する評価が不透明であることで発生します。
これは、貢献度を分かりやすい形で評価されることで解消できます。
そいういう評価制度も含めた仕組化で一人ひとりの能力を引き出すことができるのです。
また、どんな立場の人でも間違いを指摘して意見が言いやすいように、
安心安全な環境を仕組化することも重要です。
仕組を見直す視点とは
「ミス」があるところには、何かしら仕組みの問題があります。
その根本的な原因を洗い出す視点が大切です。
例えば、「ミス」につながる工程として
「マニュアルを読まずに作業する人がいる」
ということが分かったら、
「マニュアルを読むことをマニュアルにする」
という仕組みを作ります。
根本的な原因が、人の力量に頼り切った工程にあると分かったら、
パソコンの活用やシステムを導入を考える。
このとき、費用対効果を考慮した上で、
仕組の見直しが会社全体の利益につながる
という視点を持つことが大事です。
まとめ
今回は、”ダブルチェック・トリプルチェック”でも「ミス」がなくならない理由と、
「ミス」をなくすために仕組を見直す視点についてご紹介しました。
パソコンのスキルを上げれば単純作業が減るので、結果的に「ミス」が減ります。
スキルを上げて「ミス」を減らし、仕事が楽になったその先に、
自分がどんなことで会社に価値提供が出来るのかという
全体的な視点を持ちましょう。
私はかつて、会社全体の利益につながるという視点で業務改善提案をして
プロジェクトリーダーに抜擢されたことがあります。
これからは、こういうことが考えられる人材が求められていきますよ。
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